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カクテルはいかが?

おかえりなさい。

そういえば僕の社会人人生はカクテルで幕開けしたと言っても過言でないほど多くのカクテルの名前が飛び交っていました。

1989年という狂乱のバブル期真っただ中でしたので誰もが贅沢をすることがステイタスのように、いたるところでパーティが開かれオシャレな男女がカクテルグラスを片手に都会的な会話をしていた記憶があります。

まるで「わたせせいぞう」のイラストのように。

トム・クルーズ主演の映画『カクテル』がヒットしたこともあり、都会的な(そして口当たりのいい)カクテルはとても流行しました。

僕は新卒でしたので、そうした贅沢な文化には残念なことに参加できるほどの経済力を持って居ませんでした。

それにしても「カクテル」というものは、その種類の多さと同時に様々なストーリーをはらんでいたと思います。

例えば「マルゲリータ」

LAのレストラン「コック・オ・テール」のバーテンダージャン・デュレッサーがテキーラをベースにして作ったカクテルで、その名前はジャンが愛した女性からつけられたそうです。その女性マルゲリータはジャンと一緒に狩猟に出かけ、流れ弾に当たりジャンの腕の中で亡くなったといいます(諸説あり)

そうした物語性のあるカクテルが愛されない訳がありません。

そうした物語をカウンターで語る知識をどれほど持って居るかが男性のモテるポイントだったこともありました。時代ですね。

カクテルはアーネスト・ヘミングウェイの本で語られ、レイモンド・チャンドラーの小説で名台詞を生み(「ギムレットには早すぎる」)サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』では主人公の少年の思想や嗜好がカクテルの趣味に現れていて早熟な少年の憤りが鮮明に描かれていたものです。

特に有名なのは007ジェームズ・ボンドの決め台詞「マティーニを。ステアでなくシェイクで」で知られる『マティーニ』

カクテルの王者といわれる「マティーニ」ですが、その王者たる所以でレシピも様々です。

1979年に出版された「ザ・パーフェクト・マティーニ・ブック」では268種類のマティーニが紹介されていたそうです。

ビリー・ワイルダー監督の名作映画『アパートの鍵貸します』でも主人公の孤独をマティーニのオリーブで表現するなど、その有名であるだけにそうした些細な描写が出来る強みがありますし、有名なだけにバーテンダーの腕が試されるカクテルになっています。

ちなみに僕も少しだけバーテンをしていましたが、上手にマティーニが出来たのかどうか、僕がすぐに夜の世界を離れたことで皆さまにはヒントとさせていただきます。

ただ、酔って疲れ切った夜明けに自分の為に創る「テキーラサンライズ」はとても美味しかったです。

それを後片付けが終わった後、ゆっくりと夜が白み始めてくる街を見ながら頂くのは好きな時間でした。


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